今月のひと

ヤマト運輸ならではの物流プランを提案

 宅急便を世に生み出し、スキー・ゴルフ宅急便やクール宅急便といった新風を次々と提案し続けてきたヤマトグループ。2019年の創立100周年を節目に「DANTOTSU経営計画2019」プランを打ち出し、アジアを中心としたグループ全体の国際化を推進していく。同グループ米国法人として1980年から34年に渡り米国に進出する日系企業の物流を支えてきた米国ヤマト運輸。同社代表取締役社長として指揮を執る小倉康嗣氏にお話を伺った。

社員一人ひとりが真剣に考え、理想に向かって行動する

国際宅急便の拡大

 

 米国ヤマト運輸では、商業貨物の輸送(フォワーディング)、米国での事業展開に伴う駐在員の日米間引越し事業、そして小口事業(国際宅急便)の3本を事業の柱に据えている。その中でも近年目覚ましい動きを見せているのが「国際宅急便」だ。「つめ放題パック」や「別送サービス」といった従来のサービスに加え、近年ではBtoCという新たな潮流が確立されてきた。「宅急便は本来CtoCの荷物配送を目的に生まれたものですが、eコマースが盛んになり、日本に居ながら海外の商品をネットで購入するBtoCが良い動きを見せています」。通販利用者の拡大を背景に、昨年度の国際宅急便取扱い数は100万個を超えた。

 

米国市場への大きな期待

 

 ヤマトグループは、「クロネコ親子」の可愛いロゴで親しまれてきた。これは「親猫が子猫を優しく運ぶように荷物を丁寧に取り扱う」という米国アライド・ヴァン・ラインズ社の経営思想に感銘し、許可を取って同社がロゴ化したもの。小倉氏は、このロゴに込められたヤマトの考えや日本のホスピタリティ、そしてキメの細やかさは、アメリカの物流事情にも受け入れられる余地があるはずだと考える。「もちろん文化の違いや国土の広さなど、考慮すべき点はありますが、米国内でのモノの移動に、この日本的センスを待ち望む顧客は、日本人だけではないと思っています」と。

 

『バリュー・ネットワーキング』構想

 

 クロネコヤマト=宅急便・引越しというイメージが先行しがちだが、ヤマトグループには、「物流」に関わるすべての機能や豊富なノウハウが蓄積されている。同社では、これをLT ロジスティック・テクノロジー(物流)、IT インフォメーション・テクノロジー(情報)、FT フィナンシャル・テクノロジー(決済)と名付け、「モノを運ぶ」行為に、これら経営資源を相互に組み合わせた『バリュー・ネットワーキング』構想で、物流を「バリューを生み出す手段」へと進化させていく。

 「既に稼働を開始している『沖縄国際物流ハブ』や『厚木ゲートウェイ』、そして10月上旬に稼働予定の国内最大級物流ターミナル『羽田クロノゲート』といった新しい物流拠点は、海外と日本を結ぶ窓口となり、物流事情を大きく進歩させます」。「米国ヤマト運輸でもこの『バリュー・ネットワーキング』の強みを最大限に活用し、米国ヤマト運輸ならではのトータル物流戦略を提案していきます」。

 

失敗を恐れずに、まずはやってみる

 

 「米国ヤマト運輸に赴任して2年。紆余曲折を経て、『失敗を恐れずにやってみる』という境地に辿り着きました。企業は変化に対応できなければ、恐竜と同じように絶滅するだけです。社員の文化的背景や価値観は各自違いますが、お客様の求めていることを一人ひとりが真剣に考え、理想に向かって行動する。それが、クロネコヤマトを利用して頂く皆さんの満足に繋がるのだと信じています」と米国ヤマト運輸のさらなる発展に向け、自らの身を引き締めた。  www.yamatoamerica.com/